運動の敏感期にいる子どもを対象として『日常生活の練習』という分野の教育があります。
運動の敏感期は模倣期と重なり、この時期の子どもは大人の真似をするのが大好きです。
そのため、この分野の活動は生活関わる内容となっています。
日常生活の練習で使用する物を用具と呼びます。用具は小さいサイズで、子どもが扱いやすい物を用意しています。活動の種類には以下のものがあります。
基本運動 | 椅子に座る・立つ 切る 張る 縫う 蓋を開ける 等 |
社交的なふるまい | 挨拶 扉の開閉 順番待ち 先の尖った物の渡し方 等 |
環境への配慮 | 掃除 金属磨き 花の水切り 食器洗い 鏡磨き 等 |
自己への配慮 | 衣服の着脱 鏡を見る 靴の手入れ 手洗い 等 |
運動の調整 | 線上歩行 静粛練習 |
大人のように早く動いたり、体の動きをコントロールするのが難しい時期ですが
日常生活の練習を通し生活に必要な体の動きを体得していきます。
運動のメカニズム
運動のメカニズムについて説明します。運動とひとことで言っても、動きが成り立つまでには流れがあります。
例えば鉛筆を持つ事を想定してみましょう。
①目という感覚器官を通して鉛筆を見る(外的刺激)
②情報が脳に伝わり、鉛筆についての情報処理が行われる
③「鉛筆を持つ」と脳から運動器官に指示が出る
④肩→腕→肘→手首→指 というように順番に運動器官を動かし鉛筆を持つ運動が成り立つ
このように運動は体の全てが絶妙なバランスで動いて初めて成り立つものです。
子どもには、まだ運動のメカニズムをスムーズに働かせる体が出来上がっていません。これらは教え込むものではなく本人が経験を通して培っていくものです。最近は指1本で物を動かせる時代になりましたが、動きを伴って学ぶという子どもの成長の仕方は変わりません。できるようになったという喜びを通じて、心を育てることも日常生活の練習の目的です。